享保元年(1716年) – 天明3年12月25日(1784年 1月17日) (享年68歳)

洟たれて独り碁を打つ夜寒かな
黙々と碁子を敲けば残花落
葉ざくらや碁気に成行南良の京
葉ざくらや南良に二日の泊り客
「黙々と碁子を敲けば残花落」の本句 (中国『千家詩』に収録 )
約客 客と約す
黄梅時節家家雨 黄梅(こうばい)の時節 家家の雨
青草池塘処処蛙 青草(せいそう)の池塘(ちとう) 処処(しょしょ)の蛙
有約不来過夜半 約有るも来たらず 夜半を過ぎ
閑敲棋子落灯花 閑(ひま)に棋子(きし)を敲(たた)けば 灯火 落つ
○約客 友人が客人として家に来ることを約束する。
○黄梅時節 梅の実が黄色く熟する時節。梅雨の季節をさす。
○家家雨 どの家もどの家も、雨の中に閉ざされている。
○青草池塘 青々と草のはえた池のつつみ。
○処処蛙 あちらこちらから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
○過夜半 真夜中を過ぎる。
○閑敲棋子 ひまにまかせて碁石を碁盤に打ちつける。「棋子」は、碁石。「碁子」とも書く。
○落灯花 「灯花」は、灯芯の燃えかすが花のような形になったもの。
「落灯花」は、それが碁石の振動でポトリと落ちたことをさす。
《客人との約束》 客人と約束する
梅の実が黄色く熟する時節は、どの家もどの家も雨の中に閉ざされ、
青々と草が生い茂る池のつつみのそこかしこから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
約束をしたはずなのに友人は訪ねては来ず、とうとう真夜中を過ぎてしまった。
ひまにまかせて碁石をパチリと打つと、おや、灯花がポトリと落ちた。