囲碁川柳いろはカルタ
撰と脇附 棋士 中山典之
<い> 石の上に 三年で知る 石の下 日本棋院 中山典之 人は百年 圍碁は永遠 <ろ> 論よりも 證據見たさに シチョウ逃げ 静岡縣 淺野利光 天國奈落 指のまにまに <は> 鼻先に 初段ぶら下げ 友来る 岐阜縣 川中善雄 一番だけは 負けてあげましょ <に> 苦手とは 俺のことかと 憎たらし 福島縣 井幡 正 憎さも憎し 夢の中まで <ほ> ほめられて それから打つ手 凝ってくる 埼玉縣 佐久間順三 定石よりも 良き手なきやと <へ> 平和です 女房どのが 白を持ち 北海道 金子力男 わが家は俺が 二、三もく置き
<と> 鈍行が よいと 碁狂の二人旅 愛知縣 野村一樹 終點ですよ なにまだまだ <ち> 茶柱も 寝て居る 今日の負けいくさ 千葉縣 飯田 豊 良き手を見れば すぐに起つ起つ <り> 龍宮に 碁盤が あれば 更に延び 新潟縣 藤田秀夫 玉手箱には 棋書が四、五冊 <ぬ> 濡れ衣だ 君がヘボだ なんて 言はないよ 神奈川縣 黒崎 浩 大事な客と 言ひはすれども <る> 留守番を 犬に まかせて 碁会所へ 埼玉縣 佐久間順三 何だ居ぬかと ボヤく碁敵 <を> 尾が出たぞ 一夜仕込みの ハメ手だろ 秋田縣 千葉敬二 やはりバレたと 舌も出すなり <わ> 我輩は 黒である 眼は まだできず 岐阜縣 高橋佳三 名は捜石と 言ふにあらずや <か> かみさんに 負けて 關白 野に下る 熊本縣 松田昭明 かかあ殿下と イゴは呼ぶなり <よ> 寄鍋が 煮つまります と 妻の愚痴 愛媛縣 東澤 孝 それどこじゃない 煮つまったヨセ <た> 叩かれた 二子の頭 ちょっと はげ 香川縣 岡本 孝 あまり叩くと わしは怒るぞ <れ> レコードを 静かに 流し 詰碁解く 東京都 大津守史 全部正解 これぞレコード <そ> 測量し 開拓した地 乗っ盗られ 大分縣 藤崎幸次郎 還るはいつぞ 北の島々 <つ> 艶消しじゃ このお嬢様 ハメ手 打つ 山口縣 米原綱明 爺の得意手 眞似てゴメンね <ね> ねんごろに 慰められる 程の負け 岐阜縣 森本博之 慰められる ほどに立つ腹 <な> 泣く樣な 聲で三度目 待ってくれ 岐阜縣 柴田 一 ダメだ 野球も 三振がある <ら> 來世まで 白は渡さぬ 諦めな 岐阜縣 坂本元弘 來世は黒と 念書 書いてよ <む> 向先 この蛤の 白さかな 廣島縣 栗栖文雄 黒き 小さき 碁敵の石 <う> 烏鷺とはね 圍碁の ことよと ザル二人 愛知縣 松本美江子 道理でウロウロ するワ この石 <ゐ> 居直った 石のかたちの 憎いこと 東京都 宗像 貢 大あぐらかき アカンベヱする <の> のぞいても ついではくれぬ 強いバカ 福岡縣 上村 力 大愚に似たる 大賢もあり <お> 老先の 短き吾に 勝たせてチョ 愛知縣 谷川 博 ヲハリ名古屋と 投げて下され <く> 悔やむなよ ポカは 天下の 廻りもの 徳島縣 伊丹哲也 目玉グルグル 阿波の渦潮 <や> 野次馬も 寄らぬ となれば また淋し 栃木縣 中澤 馨 強すぎるのも 弱すぎるのも <ま> 又しても ふとんの下に 石が見ゆ 北海道 久保田 實 下ごころとは これを言ふらむ <け> 血壓が 少し高くて 碁制限 東京都 金田余心 せっかく來たのに せめて一番 <ふ> 不可解な 石よと 見やる 眼鏡ごし 愛媛縣 福田哲明 よほど強いか よほど弱いか <こ> 子ら巣立ち 妻と究める 烏鷺の道 奈良縣 谷口貞一 鴛鴦老いて 烏鷺となるらし <え> 厭世の 因は手直り 二子 三子 神奈川縣 天野旭子 死にたいだろう いいや生きたい <て> 手刀は 要らぬ トットと 石あげよ 群馬縣 大磯保夫 手つき言ひ草 すべて不愉快 <あ> 飽きもせず 大負け小負けで 日が暮れる 埼玉縣 星野清五郎 カラスの勝手だ オレは歸るぞ <さ> 咲いた咲いた 老後に 咲いた 圍碁の花 東京都 加賀 肇 白と黒との 二色なれども <き> 切られても 血が出てこない 碁の勝負 北海道 中里清之助 出ては居るなり 見えぬだけなり <ゆ> 夢にまで 出でし 碁盤を 何とせう 長崎縣 眞﨑成子 覺めても耳に 残る石音 <め> 冥土にも 碁會所あるやと 墓に問ひ 福岡縣 城田健二 蟻が出て來て アリと答える <み> みどり兒に 碁石握らせ 大目玉 埼玉縣 杉本喜一郎 ギュッと握った 白を放さず <し> 初心者が 大斜 妖刀 大雪崩 埼玉都 望月千波 オロオロしてる 普及指導者 <ゑ> 遠慮がち 師匠を超えた この一手 新潟縣 織田捷一 ウンよろしいと 師匠うなづく <ひ> 悲鳴あげて 實は 喜ぶ 胸のうち 岡山縣 三宅昭三 怖い饅頭 團體で來た <も> 文句あるか おまへん 恐れ入りました 大阪府 平野 清 一手勝ちとは ひでえ親爺だ <せ> 扇子立て ハッタと 睨む 心地よさ 東京都 本田敏雄 バッタと敵の 倒れたる時 <す> 好きなのは 私か碁か とは 無理なこと 京都府 山口 裕 ぬしより長い 碁とのつきあひ 《京》 京の街 斜めに行けば シチョウかな 撰者 四丁あたりに 碁敵の家